『一日一歩』
部長・吉永 光徳

 今年も、5月となり選手権大会まであと2ケ月あまりとなった。毎日の練習と週末の試合を繰り返し、今年の生徒たちもまた、夏に向かって走っている。怪我をしたり、調子を落としたり、上手くいかないことが続いて辞めてしまいたくなったこともあっただろう。それでも、冬場は苦しい走り込みを続け、バットを毎日何本も何本も振り続けてきた。ノックのときは、届かないボールも最後まで諦めることなく追いかけた。白球を追いかけることが自分が野球をやっている証であるかのように。高校時代は夢を見る時期である。しかし、同時に現実を知るときでもある。人は、その夢と現実のギャップに悩み、苦しむ。それは、大人になるということであり、自分の人生と向き合うということ。島高の野球部員もまたそうである。野球を通して夢を見て、現実とのギャップに苦しむ。それがすべてのスタートである。人は夢に一歩でも近づこうと努力する。努力の過程に苦しみがあり、挫折がある。挫折を味わったときにやめてしまえばそこでひとつの結果となり、続けていけばそれはひとつの過程となる。一つの挫折を乗り越えれば、一つの大きなものを得ることができるだろう。二つ乗り越えれば、さらに大きな経験となるはずである。 
しかし、何事にも終わらなければならない時はやってくる。一般に野球は高校野球において一つの終わりを迎える。それは、誰もが参加する権利を持ち、誰もが一生懸命に取り組む権利を持ち、誰もが夢を見る権利を持っている時である。その高校野球は、夏の選手権大会においてその終止符を打つ。時にその結果は残酷であったりするが、終わりがあるからこそ、そこに自分の夢を賭け、そこに至るまでの努力や思いのだけをぶつけることができるし、そこで人は成長することができるのである。人生において終わりは死であり、それまでは、何が起ころうともすべてのことは過程となる。今年の3年生にとっても島田高校の野球部で過ごした3年間が、それぞれの人生の糧となるように夏の選手権大会に向けて、毎日一歩ずつ前進していきたいと思う。

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